「空気が私のスタイルだ」とペーター・ツムトアは言う。
「良質の建築とは、建築のガイドブックに出てくるようなものでもなければ、建築史に登場するとか、あちこちで取り上げられるとかいうものではない。建築の質とは、私にとっては、建物に心が触れるということ、それだけに尽きます。ーいつ見てもその度に心を動かされるものを、どのようにして設計したらいいのかを考えているのです。」
ツムトアの指す空気感は、その空気感をとらえる”私の気分、想念、期待”が作用して、その空間全体の美しさなのでしょう。相互作用によるすぐれた美しさを求め、これを「実在するものの魔術」と名付けています。
あるカフェで学生たちが思い思いに会話するカフェの情景を捉えた写真(1930年代ハンス・バウムガルトナー)をもとに、ツムトアは、「このような場の空気、この密度、この情景を設計することができるだろうか」と建築設計を通じて、その空気感を作り出すことへの意欲を見せています。
空気感は、”私”を軸として、そこに実在する全てのものが放つものとし、全体調和を重んじた建築のあり方について論じています。
ペーター・ツムトア
1943年スイス、バーゼルに、家具職人の息子として生まれる。 父の元で家具職人の修業後、バーゼルの工芸学校(Kunstgewerbeschule Basel)とニューヨークのプラット・インスティチュート(Pratt Institute)で建築とインダストリアルデザインを学ぶ。